「50歳からの英語」

 友人の突然の死を信じられない彼はCouncilの講演を引き受け二,三日の滞在が確保しいろいろと調べ始めます。講演を引き受ける際のやり取りがちょっと面白い。
Crabbin:We are having a little lecture on the contemporary novel...I thought perhaps you wold like to speak.
M: They wouldn't know me.
C: Nonsense. Your novels are very popular here , aren't they Sergeant ?
Paine: Very popular, Sir.
 西部劇大フアンの彼のお墨付きを聞きCrabbinは三文文士を純文学現代流行作家と早とちりし賓客としてもてなすと言い出す始末。これをひきうけない手は無いと It's a deal !ということに。Haryの友人と称するクルツ男爵、闇屋、最後を見取ったという医者などにいろいろ尋ね彼の不信はますます深まります。
そんな折、ハリーのガールフレンド舞台俳優アンナの存在を知り楽屋を訪れる。
いろいろ聞き出そうとするのですがなにも手がかりを得られなかったかわりに同情から仄かな恋心を抱いてしまいます。この場面にsee の思いもかけない使い方がありました。
英語で一番癪などは易しい単語ばかりなのに意味がわからないことです。

"Don't understand what Harry saw in a fellow like that."

この文体は"I don't know what she sees in him"が分かれば理解できます。
"あんなやつの何処が良いんだ"はぴったりの訳です。この辺りから話は急転直下、先を急ぎます。実は少佐はハリーをペニシリンを陸軍病院から盗み出し、水で割って横流ししている悪質闇屋の親玉として追っていたのでした。そんな訳で素人の三文文士が首をつっこむのを危険視して追い返そうとするのですがマーティンは聞く耳を持たず深みに入って行き最後ではハリーを下水道に追い込み彼自身で射殺してしまうのです。
そうです。ハリーは生きていたのです。ハリーの手先の陸軍病院の看護人が身代わりに交通事故で殺され埋葬されていたのです。彼は下水道を利用し自由にウィーンの国際ゾーンとロシヤ地区を行き来して悪事を働いていたのでした。このことはこの映画最大の見せ場で証明されます。少佐に事件の全貌を知らされた彼はウイーンを去る決心をしアンナに別れを告げる為アパートを訪ねました。
A:  You're drunk, aren't you.
M:  A bit, sorry but I did want to say goodbye before I pushed off.

彼はそば寝ている猫を紐でじゃらすが彼とは遊ばず背伸びをして窓から飛び出す。

A: Not very sociable, is he?
M: No he only liked Harry. 
M: I'd make comic faces, and stand on my head and grin at you between my legs and tell all sorts of jokes. マーティンがアンナの家から出てくると向かいの建物の陰に何者かが立っている。足元で猫がじゃれている。
マーティンは大声で叫ぶ。

M: What kind of spy do you think you are?..Satchel foot ?
(俗語 A long footed person,字幕ではデカ足)What are you tailing me for.
Cat got your tangue? Come out-come out who ever are you, step out in the light,let's have a look at you. Who is your boss .
隠れている男のすぐ上の部屋の女が窓を明け明かりをかざし悲鳴を上げる。この一条の明かりで真っ黒い画面に真っ白いハリー・ライムの顔が浮かび上がる。ここぞとばかり高鳴るツイターの音。単純、明快、最高の画面、ここまでの話はこの画面を引き立たせるお膳立てに過ぎなかったのです。追われたハリーは広場の広告塔の辺りで姿を消す。  

M: I followed his shadow until suddenly..
Calloway: Well?..M:There is where he vanished. 
C: I see.
M: I suppose you don't believe me.
C: No.

書きたいことは山ほどあるのですが紙面に限りがありますので先を急ぎます。このことがきっかけになり再びアンナを訪ねたハリーが待ち伏せをしたCallowayらに追われ下水溝に逃げ込み最後にはマーティンの手に掛かって射殺されるのですがこの待ち伏せのシーンも闇と光を巧みに使い壮烈とも言える美しさです。ここでは風船売りのシルエットが巧みに生かされています。

墓地の真中を貫く晩秋の並木道、葬儀に参列したアンナが遥か先を歩いている。
カロウエイとマーティンがジープで追い越すが無視される。しばらく先に行ってジープを降りた二人はアンナを待つ。
M: Calloway, can't you do some thing about Anna.
C: I'll do what I can, if she let me. (彼はアンナが偽造パスポートでの不法滞在を発見されロシア地区に強制送還させられるところを自由ゾーンに行かれるよう救いの手を差し伸べたが断られた苦い経験がある)
M: Wait a minute-let me out.

C: Well,there's not much time.
M: One can't just leave-please.  
C: Be sensible. Martins.
M: I haven't got a sensible name Calloway.

この簡単明快な名科白は日本語ではその万感こもるニュアンスまでは伝わりません。何度も何度も口に出しているとなんとなく英語のままで心に入ってきます。不思議です。
マーティンスは彼女待つ。遠くからまっすぐ歩いてきた彼女はマーティンスに一瞥もくれず無言で去っていく。

最初意図していた内容と書き進むうちに変わってしまい舌足らずになってしまいました。本当は気の利いた科白の説明をメインにと思っていましたがこんな文になってしまいました。何かのお役に立てれば幸いです。


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